(88)トーベ・ヤンソン展
フィンランド国立美術館アテネウムはヘルシンキ中央駅から徒歩1分。
ガイドツアーやイベントなども予定されています。
トーベ・ヤンソン生誕100年、いよいよ注目の特別展が始まった。オープニングに集まった招待客の数は、はるかに主催者の予想を上回っていたのだろう。セレモニーが始まり、周辺一帯に人が集まると、身動きがとれないほどになってしまった。挨拶をしている人の顔も見えないし、これなら今のうちにゆっくり作品を鑑賞しようと思って群れを抜け出してみても、展示室までたどり着けない人混みなのだ。同じことを考えていた人数人と、私たちは、ただただ人の群れの周辺をうろうろしているだけでセレモニーは終わってしまった。
フィンランドで有名な芸術家たちが数人、フィンランドの現代芸術がなかなか世界にでていけないのはどうしてか、というような話を熱心にしていた。トーベ・ヤンソンはなぜこんなに世界中の人に愛されたのか。少し行くと、壁画のスケッチを前に、私くらいの年齢のおばちゃんやもう少し年上のおばちゃんたちが「きゃあ、かわいいかわいい!」とはしゃいでいる。なんだ、私と変わらない。立体模型に夢中になる学生さん、戦時中の作品について語り合う立派なひげのおじいさんとハンチング帽のおじさん。いかにもな人たちがいかにもな反応をしているのを眺めているのも、なんだか楽しい。知らない人たちと、お互い自分のムーミン体験を話すあたりも「あったらいいのになあ」と思っていた姿そのままだった。
今回の展示は、これまでにない幅広いトーベの作品がたくさん登場すると言われていた。子供の頃から晩年までの作品、絵画にはじまり挿し絵、手紙、本の表紙、デザイン、舞台衣装、広告、お遊び、さらさらっと描かれたムーミン、手紙や贈り物に描かれてる絵、ムーミンから派生した舞台や動画やプロダクト。そうそうトゥーリッキ・ピエティラと一緒に作っていた立体模型も展示されている。
部屋が時代ごとになっているため、ぱっと見た印象で、その時代がトーベにとってどんな時代だったかが感じられる。パリ留学やヨーロッパ遊学時代、戦争、そして出会った人(とくに恋人)たちの影響を強く受けながら自分の表現世界がどんどん広がっていく。
トーベはムーミン谷のほかにも絵画や手紙に自分の中の理想郷をよく描いていた。そんな作品も今回は展示されている。
学校は苦手だったのに結果として美術学校に通い、長く学問の世界にいたトーベ。その後も戦争やビジネスといった嫌いなことに巻き込まれる年月が続いた。バランスをとるかのように理想郷を描きながら、大勢の人たちに愛される膨大な数の作品を残した。オープニングに来ていたあらゆる人たちも、気づけばどこかの作品の前で立ち止まり、熱心になにやら話をしている。これまで色んな人が言ってきていることだけど、「トーベ・ヤンソンの作品に触れていると、トーベは誰よりも私のことを分かっててくれていると思ってしまう」という言葉を改めて思い出す。作品はもちろん、その前に立ち止まる人たちも含めたところにトーベ・ヤンソンの世界があるような気がした。
森下圭子
スーパーやデパートでもイースター関連のチョコエッグや飾りが賑やかになってきました。ムーミンショップの今年の一番人気はこれ。もちろん定番のフィギュア入りチョコエッグも人気です。