(89)イベント、グッズ、日々のムーミン
使うひとのひと工夫で、こんなに楽しいムーミン遊び。こうすれば、マグネットも立体的に飾ることができる
トーベ・ヤンソン生誕100年も4ヶ月、トーベ・ヤンソンのお祭りは、ところどころで予想だにしなかった事態を招いた。アラビアの記念マグは6個に1個の眼鏡つきを巡って店頭で喧嘩乱闘になったのは有名な話。さらにファッツェル本店だけで限定販売された記念トレイは2ヶ月しないうちに完売してしまい、次の入荷が今か今かと待たれている。メディアでのお祭り騒ぎはいったん静かになった気はするものの、日々の暮らしでは相変わらずお祭りが続いている。地方の自治体なども何かやろうと工夫を凝らし、図書館のあちこちでムーミンの読み聞かせがあったり、毎週のように大小のイベントが全国各地で行われているようだ。
そんなもろもろの中心にあるのがアテネウム美術館のトーベ・ヤンソン展。バスをチャーターしてやってくるグループなど、全国各地から大勢の人たちがやって来ている。フィンランド芸術史で黄金時代と呼ばれる時代を牽引した画家アクセリ・ガッレン=カッレラ展よりもずっと早いペースで、アテネウム美術館の特別展としては、ピカソに並ぶ勢いの人気なのだそうだ。
日々の糧を得るためにポストカードを描いていた時代。フィンランドでは戦時中、貨幣の価値が不安定だからと絵画に投資する人たちが多かった。そのとき描かれた「売るため」の絵画作品を見れば、トーベ・ヤンソンだけでなく、フィンランドが当時どんな絵を好んでいたのかも伺える。一方で世間に先駆けムーミンを使って環境問題に訴えかける70年代があったり。トーベ・ヤンソンを通してフィンランドの歴史や文化的背景が浮き出てくるのも面白い。鑑賞している人たちの話も、この時自分はどうしていたかという話をしている人、当時のフィンランドについて語る人もいて面白い。
グッズも昔の商品が復刻版で登場するようになると、改めて昔のことを思い出す人たちが自分のムーミン体験を語ってくれるようになった。小児病院の階段をぐるり上がりながら眺めた壁に描かれたムーミンたち...病気の子供として、病気の子供をつれる母として絵に励まされた経験を語ってくれる人たち。子供部屋の壁紙、しかけ絵本が楽しすぎてページの穴を破ってしまったこと、婚約したときに義理のおばあさんがくれた手作りのミイ人形。ああもっともっといろんな人たちの話を聞いていたいと思う。
森下圭子
アテネウム美術館のトーベ・ヤンソン展には自由に仮装して撮影できるコーナーも。
5月3日には視聴覚室にてこトーベ・ヤンソン展についての30分ほどの日本語紹介もあるとか(7月に2回、8月には3回予定)。詳しくはこちらをご覧ください。