ムーミンママのすべて?【ムーミン春夏秋冬】
2024年の母の日は5月12日。
母の日のための特別なデザインシリーズ、今年はオールアバウト ムーミンママがリリースされています。
主役はもちろんムーミンママ! トレードマークである赤と白のエプロン、黒いハンドバッグ、バラなど、象徴的なアイテムが散りばめられたアートは、小説『ムーミンパパ海へいく』の挿絵が主な出典元です。
石の上に立つムーミンママ
メインアートは、エプロンの紐をなびかせ、手を前で揃えてスッと立っているムーミンママ。
穏やかなムーミン谷での暮らしに物足りなさを感じたムーミンパパは、家族を連れて灯台の島へと漕ぎだします。
まる一晩と一日かけて海を渡り、やっと島に上陸して、その夜は海岸にテントを張って就寝。
翌日、ムーミンママは持ってきたバラを植えるため、土を探して島のあちこちを見てまわりました。しかし、島は灰色の石ばかりで、なかなか土は見つからず。
ムーミンママの表情やポーズはそのままですが、よく見るとハンドバッグを持っていません。いつも肌身離さず手にしていて、なくなったときには大騒ぎが起きたはずなのに?
その理由は、島に到着した夜の場面で明かされています。少し引用してみましょう。
ムーミンママは、大事なハンドバッグさえ、砂の上に置きっぱなしにしていました。それには少しびっくりしましたが、同時に元気づけられもしました。こうなれば、ほんとうに一からやり直したのであって、ただの冒険ではありませんからね。
(『ムーミンパパ海へいく』 講談社刊/小野寺百合子訳)
ムーミン谷から遠く離れた島で、ムーミンママの心境にも変化があったのです。
ムーミンママが描いたのはバラじゃない?
ノベルティのオリジナルメッセージカード(※なくなり次第、配布終了)などに使われている、壁にバラの花を描くムーミンママと、それを見ているリトルミイ(小説ではちびのミイ)。
灯台の島のどこかで、家族はみんなめいめいに、やるべきこと、やりたいことをして過ごしています。
手持ち無沙汰になったムーミンママは、物置から塗料と筆を持ってきて、壁に懐かしい景色を描き始めました。
ムーミンママと壁絵の挿絵は3点もあって、いかに大切なエピソードなのかが伝わってきます。
このお花、実は、バラかどうか定かではありません。
本文を読むと、ムーミンママが描いたのは、バラ、キンセンカ、パンジー、しゃくやく、りんごの木など。
この挿絵のあとに、こんなやりとりがあります。
「まるで本物そっくりだ! わたしにはどれがなんの花だか、ぜんぶわかるぞ! あれはバラだね」
ムーミンパパは声をかけました。
「ちがいますよ」
ムーミンママは、不満そうにいいました。
「あれはしゃくやくよ。ほら、元の家の階段の前にさいていた、あの赤い花よ」(同)
言われてみると、葉っぱがバラとは違うような!?
でも、大切なのは花の名前や種類が何かではなく、ムーミンママが心安らかにいられること、ですよね。
ムーミントロールとあき地の秘密
一方、ムーミントロールはしげみの中に、かくれ家にうってつけの素晴らしいあき地を見つけました。
ところがそこには、しっぽにかみつく赤アリの大群が住んでいたのです。
円満に引っ越してもらう方法を考えるムーミントロールでしたが、そのことを知ったミイが取った驚きの行動とは……!
個人的に、幼心に強い衝撃を受けたエピソード。もしもムーミン原作を子ども向けだと思っている方がいらしたら、ぜひご一読を。
気がとがめながらも、自分だけのあき地を手に入れたムーミントロール。
ある夜、ムーミンママをそのあき地へと案内しました。
そして、母と息子ふたりきりで、心のうちを語りあったのです。
ケーキはリトルミイのものじゃない?
グッズでは隣にリトルミイがいますが、ろうそくの立ったケーキは島に住む漁師の誕生祝いにムーミンママが用意したものです。
この絵がグッズではどんなふうになっているのか、挿絵と見比べて、ストーリーと共にお楽しみください。
ムーミンママの尽きない魅力
ムーミンママについては苦手な家事、庭いじりやお絵描きで気分転換、「母の日によせて、ムーミンママのこと」、「ムーミンたちとお茶を」など何度もブログでご紹介していますが、さまざまな側面があって、ときに思いがけない一面を見せてくれるので、いくら深堀りしてもすべてを知り尽くすことなんてできそうにありません。
そういえば、ムーミンバレーパークで4月19日(金)~7月7日(日)に開催される「ムーミン谷とアンブレラ」の今年のコンセプトは「ムーミンママのやさしさ」! いろいろなムーミンママのアート、ムーミンママをモチーフにしたフードやグッズを楽しむことができます。
園内の灯台の内部には、ムーミンママが描いた絵の再現が。お出かけの際は忘れずにのぞいてみてくださいね。
灯台の島で、ムーミントロールは大きく成長し、家族のあり方も変わっていきます。
ムーミンの物語はトーベ・ヤンソンが作り出したフィクションですが、まるで現実を生きるわたしたち自身や家族の姿を映し出しているかのようです。
文と写真/萩原まみ(text&photo by Mami Hagiwara)
Related articles