ムーミンの物語に登場する、10のアイテムの豆知識【本国サイトのブログから】
スナフキンがどこでハーモニカを手に入れたのか、知っていますか? 海泡石の電車の話を聞いたことがありますか? ムーミン谷では、キャラクター個人の持ちものやムーミンやしきにあるもの、冒険から持ち帰ってきた宝ものにいたるまで、ティーポット、ペン、貝殻などすべてのものに物語があるんですよ。今回の記事では、ムーミンの物語に登場する10の素敵なアイテムとその豆知識をご紹介しましょう。
1.スナフキンのハーモニカ
2.ムーミンパパの万年筆
3.冒険号(ボート)
4.ご先祖さまのストーブ
5.庭の貝がら
6.海泡石の電車
7.リトルミイのティーポット
8.ヘムレンさんの切手アルバム
9.ニョロニョロの種
10.天体望遠鏡
1. スナフキンのハーモニカ
スナフキンのことをよく知っているなら、彼が「持ちもの」をまるで”招かれざる客”のように扱うのを知っていることでしょう。彼にとって人生はそんなものがない方がずっと良いのです。スナフキンは、テントやおやつ、ついでに求められていない助言などもあっさり人にあげてしまいますが、ハーモニカだけは決して手放しません。ハーモニカはスナフキンにとって一番大切な(古い緑の帽子と並んで、ただひとつの)持ちものです。ものを所有するのが嫌いなスナフキンにとってぴったりの小ささで、持ち歩きもしやすいんです。

「スナフキンときたら、服なんて生まれたときから着ている古ぼけたもので満ちたりていましたし(といっても、彼がいつどこで生まれたのか、だれひとり知りません)、ぜったい手放さない大切な持ちものといえば、たった一つ、ハーモニカだけでしたからね」
『たのしいムーミン一家』(山室静訳 講談社)より
ハーモニカはジャカランダと金でできた手づくりのもの。ずっと前に、美しいものを集めていた母方の叔母から贈られたもので、それ以来ずっとスナフキンは肌身離さず持っているのです。
ハーモニカのメロディはスナフキンの一人旅と共にあるだけでなく、みんなの集まりやパーティーにも欠かせません。スナフキンは、即興で歌い出すのが大好きなのです! ハーモニカの音色は特にムーミントロールの耳には心地よく響きます。そのメロディは、スナフキンが春にムーミン谷に帰って来る最初の合図としてよく聞こえてくるからです。
2. ムーミンパパの万年筆
ムーミンパパにとっての万年筆は、スナフキンにとってのハーモニカのようなものです。ムーミンパパが万年筆なしで生きていくなんて、やろうと思えばできるかもしれないけれど、根本的に間違っていることなのです! ムーミンパパは偉大なストーリーテラーであり作家なのですから、信頼できるペンを友としているのは当然のこと。この万年筆で、英雄的な冒険から家を建てたことまで、あらゆることを記述してきました。
小説『ムーミンパパの思い出』では、ムーミンパパ自身が回想録として記した、青春時代の冒険が描かれています。ムーミンパパは新しい友だちとの出会いや、海でムーミンママを助け出したこと、おばけに遭遇したことなど、人生の刺激的なできごとを記録していますが、書き留めているのはそれだけではありません。哲学的な思考やプロジェクトの計画、新しい本など、ムーミンパパは常に何か書いているのです。小説『ムーミン谷の夏まつり』では、戯曲をまるごと一本書き上げたのですよ!

「わたしは、自分の世代と、つぎの世代の人たちに向かって、冒険だらけで、びっくりするようなわれわれの青春時代の話を、どうしても書かなければならないと思うのです」
『ムーミンパパの思い出』(小野寺百合子訳 講談社)より
3. 冒険号(ボート)
ムーミン一家が海で冒険している姿は数えきれないほど見たことがあると思いますが、彼らが信頼を寄せるボートの名前を知っていますか? 小説『たのしいムーミン一家』の中で、ムーミンたちは思いがけず、近くの海岸に打ち上げられた小さな木製のボートを見つけます。そのボートにはオールといけす、そして白い帆がついていました。
ボートの名前には「小鳥ちゃん」から「ムミナーテス=マリーティマ」まで様々な案が出されましたが、活発な議論の末に、ムーミンママは、みんながこのボートでこれからすることを思い出させてくれる名前がいいのではないかと提案します。
「『冒険号』って、どうかしら」
ムーミンママ『たのしいムーミン一家』(山室静訳 講談社)より
冒険号は頑丈で、すぐにその名にふさわしい船であることがわかりました。最初の航海では嵐に見舞われ、ムーミンたちはボートを岸に引き上げて帆で作った小屋に避難しなくてはなりませんでした。次の航海ではマメルクと呼ばれる巨大な魚に引きずられ、冒険号は危険なくらい水にもぐりました。
ムーミンパパにとって、「冒険号」は単なるボートではありません。このボートを持つことで探検に出かけるチャンスを得るのです。それは、未知なる世界へと踏み出すこと。新しい海岸線、新しい物語、そしてちょっとした海のトラブルほどムーミンパパの胸を高鳴らせるものはありません。
「ボートをごらん。わたしたちの冒険号をさ。夜見るボートはすてきだろ。新生活のスタートは、こうあるべきだ。マストの先に輝くカンテラ、遠ざかる海岸線は暗闇の中に消え去り、世界中が眠りにつくんだ。夜、旅をするのはなによりもすてきなんだよ」
『ムーミンパパ海へいく』(小野寺百合子訳、講談社より)
4. ご先祖さまのストーブ
今のムーミンやしきが建つずっと前、ムーミンのご先祖たちは人間の家のタイルばりのストーブの後ろに住んでいました(ムーミンやしきが背が高く、丸みを帯びているのはこのためです)。
小説『ムーミン谷の冬』で、ムーミントロールは、トゥーティッキが冬の間住んでいる水あび小屋の戸棚に隠れていた、灰色のふわふわのトロールを見つけました。実はこのトロールは、ムーミントロールの遠い親戚のご先祖さま。ムーミンやしきに引っ越し、(当然のことながら)居間のストーブが気に入りました。ほどなくして家のあちこちに黒いすすの跡がつくようになり、この新しい住人がすっかりここに馴染んだことがわかったのでした。

「ご先祖さまは、ソファーをタイルストーブのほうへよせてしまいました。絵はすっかり、かけかえられていました。あまり好きでないのは、さかさにかけてありました。」
『ムーミン谷の冬』(山室静訳 講談社)より
小説『ムーミン谷の十一月』では、ムーミン一家はムーミン谷を不在にしています。誰もいないムーミンやしきに入ったとき、スナフキンとホムサ・トフトはストーブの上に残されたメモを見つけます。
「どうか、ストーブで火をたかないでくださいね。中にご先祖さまが住んでいますから。
ムーミンママ」
『ムーミン谷の十一月』(鈴木徹郎訳、講談社より)
5. 庭の貝がら
ムーミンママは毎朝、色とりどりの花壇の手入れをしています。ムーミンママにとって庭は誇りであるだけでなく、心の安らぎをもたらしてくれるものでもあります。花々はムーミンママがそばにいるとき一番美しく咲き誇り、ムーミンママ自身もそうなのです。
ムーミン一家がムーミンやしきから避難しなければならない度に(あまりに頻繁なので、冷静に対処できるのはムーミン一家くらいです)、ムーミンママは自分が知っているやり方で――つまり庭に花を植えることで、新たな家を作ろうとします。小説『ムーミンパパ海へいく』では引っ越し先の島に新しい庭を作るためにバラの木を持っていき、小説『ムーミン谷の彗星』では、安全な洞窟にバラを何本か避難させました。
ムーミンママは花壇を素敵な雰囲気にするために、いつも貝がらで飾っています。
「大きなバラ色の貝がらが、あそこにはあるかもしれないわ。でも黒い土には白い貝のほうがひきたつわね」
『ムーミンパパ海へいく』(小野寺百合子訳、講談社より)
貝がらを集めることは、ムーミンママの浜辺でのお気に入りの遊びで、ムーミン一家もよくみんなで素敵な貝がら探しを手伝ってくれます。ムーミンママは特に扇形の溝がある二枚貝が好きで、貝がらのサイズや形の組み合わせをとても丁寧に選んでいます。ムーミンママにはデザインのセンスがあるんですよ!
6. 海泡石の電車
海泡石の電車は、ムーミンパパが若い頃に冒険で手に入れた最も愛着のある思い出の品の一つで、海泡石(パイプやオーナメントを作るのに使われる粘土のような鉱物)で作られたミニチュアの電車です。ムーミンパパは、旅の途中で出会った島の王さまが主催した福引でこの商品を当てました。回想録の中で、その夜のことを懐かしく思い出しています。
「私の賞品は魅力的なものでした」
「27番がおそらく、いちばん立派なものでしょう。それは居間のかざりものであって、サンゴでできた脚の上に、海泡石の電車の模型がのっかっており、二両めの前デッキには安全ピン入れがついていました。」
『ムーミンパパの思い出』(小野寺百合子訳、講談社より)

海泡石の電車は、ムーミン一家の宝ものとして大切に受け継がれてきたもので、ボタンや安全ピンをしまうのに使われています。小説『ムーミン谷の冬』では、サロメちゃんという名の小さなはい虫の女の子がこの電車の中で暮らしていましたが、電車の中には安全ピンやら何やらがあるので、あまり寝心地がよくはありませんでした。
海泡石の電車は、スナフキンがムーミントロールによく手紙を隠しておく場所の一つでもあります。
7. リトルミイのティーポット
リトルミイのイラストにはたびたびティーポットが描かれていますが、リトルミイの大ファンならきっとその理由を知っていることでしょう。ムーミン谷で最も小さい(そして最もエネルギッシュな)キャラクターであるリトルミイは、ムーミンやしきのティーポットをお気に入りの隠れ場所のひとつにしていて、自分のプライベートな部屋だとさえ思っています。誰かがコーヒーを淹れるためにそのポットを使うかどうかなんて、リトルミイにとっては関係ないのです。
「ミイったら、またどこかへかくれてしまったんだね。」
ムーミントロール『ムーミン谷の夏まつり』(下村隆一訳、講談社より)
昼寝をしていないときは、ティーポットの中で次のいたずらを企んでいます。周りの人が予想もしていなかったときに顔を出したり、近くの会話に唐突にコメントしたりするのが大好きなのです。でも、ムーミン一家は次第に、このいたずらにすっかり慣れてしまったのでした。
8. ヘムレンさんの切手アルバム
ヘムレンさんたちにとって、昆虫、植物、切手など、あらゆるものを集めることは真面目な仕事であり、彼らはそれを心から楽しんでいます(コレクションが完成するまでは、ですが。完成すると、人生の目的がすべて消えてしまったかのように感じてしまうのです)。

切手を集めるヘムレンさんは、小説『ムーミン谷の彗星』(1946年)で初めて登場します。彼は迫り来る彗星から安全な場所を探し、ムーミントロール、スナフキン、スニフと行動を共にすることにします。そしてムーミン谷へ向かう途中で嵐に遭い、切手アルバムを吹き飛ばされてしまうのですが、幸い、切手はムーミンママとムーミンパパが見つけてくれました。ヘムレンさんはコレクションを取り戻したうっとりするような安心感の中で、彗星のことも、危険が迫っていることも、そして生き延びる使命も、すっかり忘れてしまったのでした。
後の話では、この切手コレクションは完成し、ヘムレンさんは次に何を集めようか悩みはじめます。
「わしの切手コレクションは、完璧だ。欠けているものなど、一枚もない」
『たのしいムーミン一家』(山室静訳 講談社)より
天文台を探す旅の途中でムーミントロール、スナフキン、スニフを助けてくれたのは、昆虫採集をしているヘムレンさんだったことを知っていましたか? このヘムレンさんは、地下の穴に閉じ込められてしまったムーミントロールたちを珍しい昆虫かもしれないと思い、大きな虫採り網ですくい上げてくれたのでした。もしかしたらヘムレンさんたちのこのコレクションへの熱狂ぶりには、案外意味があるのかもしれません。ときには命を救うほどの観察力が発揮されるのですから。
9. ニョロニョロの種
ニョロニョロは、たいてい海を航海し、水平線に向かって果てしなく移動を繰り返す、落ち着くことのない生きものです。細長いニョロニョロたちは、小さな白い種から大人に成長します(ただし、夏至の前夜に蒔かれた種からだけです!)
ムーミンパパは、回想録に書かれているとおり、ニョロニョロについて一番よく知っています。冒険の途中でニョロニョロの大群を目撃し、一度などはその無言のグループに加わろうとさえしたのです(予想通り、がっかりするような結果に終わってしまいましたが)。でも、そんなムーミンパパでさえ、ニョロニョロの種の起源については知りません。
1954年に描かれたムーミン・コミックスの「ひとりぼっちのムーミン」という作品では、スナフキン、ムーミントロール、スニフが普通の植物だと思って買った種は実はニョロニョロの種で、大量のニョロニョロが生えてきてしまいます。また、小説『ムーミン谷の夏まつり』では、スナフキンは、スナフキンらしいアナーキーなやり方で、ニョロニョロの種をより工夫して使って、公園番にいたずらしたのでした。
スナフキンはリュックサックの中をごそごそやって、大きなふくろを一つ、引っぱり出しました。それには、つやつやした白い小さなたねが、いっぱい入っていました。
「それ、なんなの?」
「ニョロニョロのたねさ」
ちびのミイはびっくりして、聞きました。
『ムーミン谷の夏まつり』(下村隆一訳、講談社より)
10. 望遠鏡
小説『ムーミン谷の彗星』では、ムーミントロールとスニフ(そしてスナフキン)が、宇宙についてと、ムーミン谷に迫る未知の脅威についての答えを見つけるために、天文台を目指して冒険に出かけます。天文台はおさびし山のてっぺんにあり、ガラスの屋根の上には見事な望遠鏡が設置されています。

生真面目な学者たちに囲まれて、スニフは望遠鏡で夜空をのぞかせてもらい、宇宙は実はとても大きくて黒い、という結論に至ります。
「あの彗星の尾は、後ろについているのだ。それに、まっすぐにこっちへ向かってくるから、動かないように見えるんだ。美しいじゃないか」
学者は説明しました。
『ムーミン谷の彗星』(下村隆一訳、講談社より)
新刊『ムーミンって何?』
これらのアイテムは、『What is a Moomin?』という本から厳選したものです。この本では、ムーミンの物語に登場する100のアイテムをイラストで解説しています。誰が、何を、いつ、なぜ作ったのかがわかりますよ。

ムーミンママのハンドバッグから、飛行おにの帽子、そしてトフスランとビフスランの旅行かばんまで、この本はムーミンの物語の名場面の数々へ誘ってくれるでしょう。さらに、ヘムル形の浮き輪、雪のうま、たまごの福引(これ、何のことかわかります?)といった、あまり知られていない設定についての裏話もあります。
ムーミンファンへの贈りものにもぴったりなこの魔法のような一冊は、現在英語版が発売中で、日本語版は4月に発売予定です!
翻訳/内山さつき