(227)ムーミンが好き【フィンランドムーミン便り】

cupp x MOOMIN
先月少し紹介したcupp x MOOMINカフェ。店に行ってみると、フィンランドの学校はすでに夏休みということもあってか、ひっきりなしに人がやって来ている。お友だちとやって来た小学生、家族連れ、外国人旅行者もいれば昔からのムーミンファン、一人の人もいればグループもあり。ムーミン好きの層は厚い。
私はバブルティーを飲んだ経験がほぼない。なので店員さんにお任せしてしまう。ただムーミンやしきの赤い三角屋根をカップに乗せてもらえるのかどうかだけ確認した。バブルティーを頼めば赤い屋根つきだ。私はミルクティーを飲みながらバランス良くタピオカを吸い上げる技術がないままミルクティーを飲み干してしまい、最後はひたすらストローでタピオカだけを吸い上げて食べていた。なんだか間違っている気がしたけれど、ムーミンに囲まれた空間ではそれでも全然OK!と言ってもらえている気がする。人がひっきりなしにやって来て回転の早いカフェだったけれど、なんだか優しい空間で、これがムーミンマジックなのかな、などと思う。
6月にはアラビアのムーミンマグを33年手がけてきたトーベ・スロッテさんのトークイベントが建築&デザインミュージアムであることを知り、申し込み開始と同時に申し込んだ。このイベントでは、トークの後にトーベ・スロッテさんがデザインしたマグを持参すればサインをしてもらえるという。
33年で手がけたマグは113。でもトーベ・スロッテさんは、マグはカイ・フランクがデザインしたティーマ、柄はトーベとラルス・ヤンソンの絵を使っているし、会社の意向もある。だからあくまでも合作なんですということを強調していた。
彼女が最後に手がけたマグは今年のムーミンの日を記念して発売される秋がテーマのマグ。ムーミンで秋は珍しいけれど、これまでとは違った色味(紅葉など)が出せる。最初のムーミンの日マグは夏で、そこから冬、春ときて、これで四季が揃うことになる。そういえば、これまで取材などで話を聞いていても、トーベ・スロッテさんはぱっと見たときの色にとても敏感だと思ったことが何度かある。トークイベントで好きなマグを問われたときに答えたのもムーミンの日マグの夏の色、冬の色味、やっぱり色の話をしていた。
ムーミンマグのファンやコレクターたちの中には、ストーリーをよく知らない人も多いのだとか。でもトーベ・スロッテさんはコミックスと小説を自由に行き来できるのがムーミンの魅力だと言う。イベントに参加していた人たちと話をしていたのだけれど、ムーミンを愛しているトーベ・スロッテさんが続けてくれたからマグがこんなに愛すべきものになったんだと思うと私たちは口々に話した。本当にそう思う。
トークイベントに参加した人たちがサインをもらうために用意していたマグはどれもレアなマグだった。小学生くらいの子が親と来ているとか、年齢層も広く、ムーミンじゃなきゃこんな集まり方はしないかも?と思うくらいに違うタイプの人たちが集まっていた。生まれた時からムーミンマグがあって、アニメのセリフを覚えているムーミン世代の人、出産を機にムーミンを再読してムーミンに支えられるように子育てしムーミンの世界にひきこまれていった人、マグを集めるうちにコミックスも気になり、今では読んでいて突然「あ、これあのマグの絵だ!」という発見を楽しんでいる人。みんながそれぞれ違った形でムーミンを好きで、そしてムーミンマグにもこだわりを持っていて、お互いがその違った好きや違ったこだわりを聞いて楽しいっていうのは幸せだ。
トーベ・スロッテさんには未完のマグがひとつある。最後まで提案しなかったマグだけれど、アイデアはずっとあったのだそう。はい虫をはじめムーミンに登場する小さな存在たちをちりばめたマグ。改めてトーベ・スロッテさんだったからムーミンマグがこんなにも愛される存在になったんだと思った。ムーミンマグの引き継ぎは、トーベ・スロッテさんが2022年で定年になりながらも並走する形で新しいデザインチームと行ってきている。そのチームで作る現場も楽しかったと語るトーベ・スロッテさん。私は紫のヘムレンマグにサインをもらった。洗うと消えてしまいそうなので、ひとまず棚に飾ることにした。

33年にわたってアラビアのムーミンマグを手がけてきたトーベ・スロッテさん
森下圭子