(76)ミイがしないことをしない旅

先日パリに行った。トーベ・ヤンソンが若い頃からしばしば訪れていた街だ。フィンランドや北欧の芸術関連機関では、世界のあちこちでアトリエ付きの住居を所有していて、期間限定で芸術家たちに提供する制度がある。パリは特に人気で、昔からパリで勉強をしたい、パリで刺激を受けたいという芸術家が多い。私にとっては1年半ぶり2度目のパリ、わずか数日の滞在で、友人がこんなメッセージをくれた。

「ミイがしないようなこと、しちゃだめよ。」

この一言はその友人らしく、ミイのように、ではないその一言がとても嬉しく、そしてミイがしないことは何かと考えた。地図は朝ホテルを出る前にざっと頭の中にいれておこう。ホテルを出たら地図を広げず、ガイドブックも持たずに街歩きすることにした。近所の人たちで賑わう市場に出くわしたり、あとで名店と知るパン屋さんやお菓子屋さん。疲れた頃に公園が見えたり、お腹が空いた頃に行列のできるお店に辿りついたり、こんな街歩きも楽しい。

「パリは変化し続けるから好きだ、刺激になる」というフィンランドの芸術家が多い。わずか数日、ミイのしないことをしないパリの旅を終えてフィンランドに戻ってきたら、ムーミンの世界はあれこれ活発に変わっていた。国立美術館は来年のトーベ・ヤンソン生誕100周年の記念展にむけて、トーベ・ヤンソンの絵画を探していますと大きく呼びかけ、ムーミンショップでは、新しいムーミングッズが次から次へと増えていた。

過去50年で一番寒い3月らしく、相変わらず凍った海の上を散歩したりスキーしたりできる毎日が続いている。日ごとに太陽が眩しさを増し、燦燦と照る太陽の光を浴びる子供たちは、海の氷の上で側転したり逆立ちして全身で嬉しさをほとばしらせている。ふふふ、まるでムーミンだ。

森下圭子

やっとフィンランドでもご先祖さまが仲間入り。スティンキーと間違えて手にされている方もいらっしゃるとか。まるまる、ふわふわ。

ボール型のケースに入ったリップワックス。ちょっとしたプレゼントにと買っていかれる方が多いそうです。